20100902

[Movie]ハート・ロッカー



ハート・ロッカー (2008 アメリカ)

最近流行の"ドキュメンタリー・タッチ"だけあって、ストーリーには大した転調がない。爆弾処理班に所属する主人公の、イラクでの任務の模様がひたすら描かれるだけ。とはいえ、これだけで2時間10分持たせるキャスリン・ビグローの手腕は見事で、女性初のアカデミー監督賞受賞も納得。緊張感の描き方が素晴らしく、最初から最後まで全く飽きずに見られた。

ただ、相対的評価で云うと、やっぱり作品賞はアバターの方が相応しかったんじゃないかなぁと…。映像表現から云っても、映画的価値から云っても。授賞式が終わってからというもの散々グチを並べてきたけど、2作を見終わって、その思いは強まるばかり。アバターはストーリーが空っぽだなんて言われてるけど、ストーリーだけで言うならこっちの方が空っぽだよなあ。

あと、散々批判されている部分として、この作品は「アメリカ兵=正義」「イラク人=得体の知れない不気味な存在」と、これ見よがしに描いてしまっているところがある。戦争の虚しさを謳う『プラトーン』や『ディア・ハンター』とは正反対。そこは自分も、見ていてちょっと気になった。

アメリカ万歳的な描き方に嫌悪感を抱く人もいるだろう。が、まあ映画の視点=主人公の視点と捉えれば、病的なほど偏った描き方は、911以降のアメリカ人の心の闇や不信感を表しているのかなぁと。もっと言えばビグローは「格好いい男」を描きたかっただけで、イラク人とかはどうでも良かったのかなぁと。

普通の基準で見たら充分面白いんだけど、オスカー作品と言われると「うーん?」という感じ。去年が文句なしの大傑作だっただけに、オスカーに対するハードルが少し上がり過ぎてたかも。

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