20110331

未公開映画レビュー 「RPG」



RPG (2009 カナダ)


パッケージだけ見て「Z級映画っぽいなぁ」と思っていたのだが、IMDbの情報を見てみると予想外に華々しい受賞歴が。カナダのアカデミー賞ことジニー賞で撮影賞・衣装デザイン賞の2部門にノミネート。ユタ州のスラムダンス映画祭では観客賞を受賞。更にトロント映画祭ではカナダ映画の新人賞を受賞。どうも、かなり評価されてる作品みたいで。

ストーリーは、ファンタジーの世界を再現したコミューンにのめり込んでしまった恋人を取り戻すため、主人公がそのコミューンに乗り込むんだけど、そこで世界観を破壊する行動を取ってしまい、参加者たちの怒りを買う。そして、次第にゲームの枠を超えた悲劇を生み出していく…というもの。

登場人物たちがやっているものは、どうもゲームというよりかは、アメリカでよくある南北戦争を再現した戦争ごっこ遊びとか、そういうノリに近いものっぽい。向こうでは本当にこういうコミューンがあったりするんだろうか? あっちのファンタジーオタクのバイタリティは凄まじいものがあるから、あったとしても不思議ではない。楽しそうっちゃ楽しそうだけど、俺は絶対一日で帰りたくなるだろうなぁ。

B級映画おなじみのビッチなヒロイン

最初は演技だったのが次第に現実と区別がつかなくなり…というストーリーを聞いて思い出すのがドイツ映画の『es エス』とか『THE WAVE』だけど、この作品はあそこまで「集団心理の恐ろしさ」というテーマに比重を置いてない。

登場人物たちが暴走を始めるのはラスト20分くらいで、そこまでの70分は結構みんな平和にファンタジーごっこを楽しんでいて、あまりスリラーという感じはしない。むしろ、みんな役に成りきっているのに時々役を忘れて現実世界に戻っちゃったり、そういうコメディチックなシーンが随所に挟まれたりすらする。

多分そういう部分も監督が描きたかったものの一つで、メタファンタジー的な雰囲気がツボな人にはツボなんだろうけど…。ファンタジーにあまり興味のない自分としては、この70分はちょっと冗長に感じてしまった。

実際にはこんないかついファンタジーオタクはいないだろう

ラスト20分に関しても、主人公がルールを無視した行動を取ったせいでそれまで必死に練り上げてきたイベントを台無しにされて、参加者たちが「やってらんねーよ!」って怒るところまでは分かるんだけど…。

そこからなんでいきなり暴徒化して、関係ない人にまで殴る蹴るの暴行を加え始めるのかが全く意味が分からない。そこから先は玉突き的に次々と悲劇が起こっていくんだけど、その流れもちょっと強引すぎる。

もっと登場人物たちの現実世界での姿も伏線として見せておいて、彼らがファンタジーの世界に逃避せざるを得なかった背景なんかもしっかりと描いてれば、終盤の唐突な展開に説得力を持たせられたかも。それまで固く守ってきたファンタジー世界が脆くも瓦解する…。そういうカタルシスがある見せ場なだけに、この描き込みの足りなさは残念。

物語の設定は物凄く面白いし、どういうことを描きたかったのかも何となく分かる。起承転結の「起」と「結」は良かっただけに、なんとも勿体ない作品だった、



  

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