20110510

未公開映画レビュー 「ラスト7」



ラスト7 (2010 イギリス)

謎の人類消滅から生き残った7人。世界の終末とともに描かれる、衝撃の近未来アクションスリラー!ウィリアムが目を覚ますと、ロンドンの街から人が消えていた。大通りにもビルの中にも、誰ひとり存在しない。当てもなく彷徨うウィリアムは6人の生存者と出会う。しかし誰もが自分が何者なのか、なぜ人々が消えてしまったのか思い出すことができない。一体、7人の身に、世界に何が起こったのか…。(「Oricon」データベースより)


『28日後…』とか『地球最後の男』とか、終末系SFの要素を適当に詰め込んだ類似作品かな?と思いきや…。中身は結構オリジナリティ溢れるぶっ飛んだ作品で、個人的にはそこそこ楽しめた。

ただ、この作品を手に取る人って、大抵はそういった終末系SFを期待している人だろうから、あまりお勧めはできないかなぁ。そういう人たちにとってこの作品のオチは「なんじゃそりゃ!」って感じだろうし。



そもそも前述の2作品ような「誰もいなくなった世界を生き抜く」みたいなサバイバル要素は殆どなくて、この作品は「なぜこうなったのか」という原因を探ることにストーリーの比重を置いている。なので、まず絵的な見栄えは全然しない。終始、誰もいなくなったロンドンを、あーでもないこーでもないと言いながら登場人物7人が当てもなく彷徨う単調な映像が続く。

ただその合間合間に、7人の過去のフラッシュバックが挿入されて、そこで登場人物たちの関係性が判明したり、この状況の原因がちょっとずつ明かされていく…という構成になっている。この辺りは若干『LOST』の影響も見て取れる。

ただ、LOSTの悪い面にも影響を受けてしまったようで…。とにかく、この作品の一番ダメなところとして「大風呂敷を広げすぎ」!

結局、評価の肝は「オチを許せるかどうか」の1点に懸かってくると思うんだけど…。個人的には、そんなに悪いオチではないと思う。ただ、最初に風呂敷を広げすぎたことで、そのオチを自ら台無しにしてしまっているように思えて仕方ない。



見てる側とすれば、ただでさえ「700万人の人間が住んでいたロンドンから人が消えるわけだから、よっぽどの原因があるに違いない」と期待しているわけで。

そこに加えて、冒頭で思わせぶりにキリストの磔刑の映像を挟んだりして、見る人に「これは黙示録を描いた作品なのか?」と思わせたり…。かと思えば、序盤では国家的陰謀が絡んだ事件の存在を匂わせたり…。とにかく「これから壮大な物語が始まりますよ」と言わんばかりのフリを随所に入れてくる。自分でハードルを上げちゃってる状態。で、低予算作品でそんな壮大な話を作れるわけもなく、大抵の人はオチで「なんだ、そんだけかよ」と肩透かしを食らうと。

冷静になって考えてみるとちゃんと伏線もあるし、それなりに練られていて、そんなに悪くはない脚本だと思うんだけど、最初に広げた大風呂敷のせいで「がっかり感」が半端ないのだ。



更に、この作品の公式サイトにはこういうあらすじが載っている。

そう遠くない未来、ロンドンは危機に直面していた。機能しない政治、急速に増える人口、気候の変動…。もはやそれらの問題を解決することは不可能で、都市は崩壊した。人口は700万人から7人へと減り、残された彼らは新しい社会の形成のため、協力の必要に迫られていた─。


ここで書かれているようなことは、一切本編中で起こらない。人が消えたのは政治のせいでも、人口のせいでも、気候のせいでもないし、残された7人が新たな社会を形成するなんていう描写はまったくない。

なんで公式サイトがこういう嘘八百を書くのか、理解に苦しむところだが…。よく小学校の頃、すぐばれる嘘をついてわざわざ自分の首を締める奴がいたけど、この映画を作った人間は多分そのタイプなんだろう。



繰り返すけど、こういう無駄な大風呂敷さえ広げなければ、悪くない作品だったと思う。

例えば、ロンドンから人が消えたとかそんな大げさな話にせずに、一つの建物の中だけで話が進行する密室劇とかにした方が良かったんじゃないかな。その方がオチへの繋がりとしては自然だし。そもそも最初、外にいる意味が分からないし。

ランニングタイムが80分台(エンドロールを抜くと70分台)と、短く収めているところは良かった。編集の人だけは、ちゃんとこの作品の限界をわきまえていたようだ。



  

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